パッと見、とってもきれいな歯並びでも、矯正治療が必要なことがあります。
当院の患者様の例をご紹介させていただきます。
上の写真で、どこに問題があるか分かりますか?
答えは、上の一番奥の歯(上顎第一大臼歯)の位置の不正です。(上顎第一大臼歯の異所萌出)
上顎第一大臼歯は、乳歯がすべて生えそろった後6歳ごろに生えてくる歯です。
前から数えて6番目の歯になります。
↑青丸が6歳臼歯です
他の乳歯とは違い、上顎第一大臼歯は最初から永久歯として生えてきます。
別名6歳臼歯ともよばれますので、以下分かりやすく6歳臼歯と表記します。
思いきり力を入れて噛んだ時に、一番咬合力を負担してくれる歯であるため、
咬合の要、ともいわれる歯です。
この6歳臼歯が、本来の位置より手前から生えてくる場合があります。
これを異所萌出といいます。
手前から生えてきてしまうと、まだまだ抜けないはずの上顎第二乳臼歯が早期に抜けてしてしまうことがあります。
その場合6歳臼歯はさらに手前から生えてきてしまい、上顎第二乳臼歯の大人の歯である、上顎第二小臼歯が生えてくる隙間がなくなってしまいます。
別の角度から最初の症例を見ると、上顎第一大臼歯が生えてくる隙間がありません。
これを放置していると、将来的に抜歯が必要になる場合があります。
この患者様の場合は、6歳臼歯を後ろへ移動させる治療方針をたてました。
後方に移動させる余地があるのか、術前にセファロ写真による分析(精密検査)を行いました。
後方余地がないのに6歳臼歯を後方移動させる計画を立てると、動かない場合や、6歳臼歯の後ろに生えてくる12歳臼歯が埋伏してしまう場合もありますので、しっかりとした精密検査が必要です。
一番奥の歯をさらに奥に移動させる場合に使う矯正器具にはいくつか種類があります。
本症例ではパラタルアーチとヘッドギアを使用しました。
パラタルアーチは6歳臼歯の内側へのねじれを治すため、ヘッドギアは頭頸部を土台にして後ろから6歳臼歯を後方に移動させるために使用しました。
パラタルアーチは自分では取り外しができません。
2~3か月に1回、当院で取り外し、虫歯のチェックとフッ素の塗布後に矯正力を調整し再セットを繰り返しました。
ヘッドギアは自分で取り外しができます。
睡眠時と在宅時、最低10時間を目安に使用してもらいました。
毎月ゴムの強さや牽引方向のチェックを行いました。
ちなみに・・
ヘッドギアは「ファインディング・ニモ」の映画でニモをトイレに流してしまった女の子がつけていた器具と同じですね。
アメリカで映画になるくらいポピュラーな器具ですが、ここは日本・・・
できればたくさん着けて欲しいところですが、矯正治療がつらく嫌なものになってしまっては患者さんの協力が得られにくく、治療がうまくいかない場合があります。
そこで当院では日に最低10時間、睡眠時間+2~3時間を目途に使ってもらっています。
もちろん昼間もガンガン使いたい!と思ってくださる方にはフルタイムでの使用を歓迎しています。
6歳臼歯の後方移動が完了したところで、奥歯3本にセクショナルワイヤーを4か月ほど装着し、一期治療の終了としました。
今は第二大臼歯(12歳臼歯)の完全萌出を待ちながら、経過観察中です。
後戻り防止のためにリテーナーを装着してもらっています。
一期治療として適切な時期に介入できたため、抜歯をせず短い期間で土台作りが終了できました。学校検診や一般歯科で歯並び治療を勧められた場合は、自己判断をせずに、まずは専門医に診てもらうことが大切ですね。